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読み物レビュー <柴田よしき編>

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Written  By  New-Can  [ 2007年6月17日 21:20 ]    Web Clap
Category  04-C. 読書感想文
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「回転木馬」 柴田よしき著 [Amazon Link]
評価:「★★★★☆」 (※書き下ろしの?未校正Ver.を読みました)

『観覧車』という作品の続編となる作品。
自分自身は、『観覧車』という作品を読んでおらず、その情報を読破後に知り、、、
なんとなくガクッと来ました…orz。とりあえず、前編を全く読んでいないので、本作との繋がりは全く分からないのですが…前作の時点で主人公・下川唯の夫である貴之が失踪します。唯は貴之の帰る場所を残しておくべく、京都に構えていた貴之の事務所の後を継ぎます。しかし、この件をキッカケに彼女は探偵となったものの、貴之はいつ迄経っても帰って来ない…そんな状況下における彼女の成長期を描いた作品が“前編”であるようです。


そして、後編の本作。
前編において煮え切らずにイライラ感を与えた?と思われる、、、
貴之の失踪に関して、佐渡での偶然の目撃情報などをキッカケに、“ひとさまの秘密を1つずつ穿り返しながら”唯が探偵として追跡して行くというストーリーです。


場所は…新潟にある病院の一室。
ソコには佐野明子という年老いた未亡人がおりました。
彼女は佐渡の旅館に勤めていた時期があり、そこで知り合った友人の1人として渋川さわ子という人物がおりました。明子に対して、さわ子は娘である雪のことを『誰にも言わないで!』という遺言を手紙という形で託します。そのため、唯が入院中の明子を尋ねた際も貴之の存在を伝えることを頑なに拒みます。


しかし、死を悟ると人間は色々な計算をするのでしょうか。
明子は、余命僅かであるために自らのことを唯の件も含め、整理を始めていました。同室の香住笙子という人間に対して、さわ子と明子、そして貴之の3人が一緒に写っている写真を見せ、看護師に対しては『私が死んだら、笙子には葬式に来て欲しい…』という遺言を託しておりました。


笙子が退院した後、明子は亡くなるのですが…
自らが宝物のように使っていた大切なバッグの遺贈先は笙子と指定してました。彼女の用意周到振りには頭が下がる限りですが、その中には“予想通り”…渋川さわ子と明子自身の手紙の2通が入っておりました。そして、笙子は明子自身の手紙から、自らが退院した後、再び唯が明子のもとへ尋ねていたことを知ります。その際、明子は『夫を10年待っている』という話を唯自身から聞き、『私が死ねば遺言の効力も無効だと思うから、あとはあなたに決めてもらいたい…』といったことも忘れずにキチント記しておりました。


ちなみに、明子に真実の伝達に関する決定権を託された笙子は…
若い頃、銀座でホステスをしておりました。その頃、仲良くなった既婚者の男性が転勤となり、彼を追うように新潟へ出て来た所迄は良かったものの、その後、その男性は再び転勤となり、恋は成就することなく…儚い終わりを告げました。それでも、笙子は新潟に止まり続けたのですが…体調を崩した結果、明子と知り合うという運命を辿ったのでした。そんな過去を抱えていた笙子は、自らの経験を重ね合わせ、明子が何故頑なに拒否したかという理由も含め、唯に対して知っている限りの事実を伝えます。


しかし、唯にしてみれば、笙子から伝えられた事実には…
『夫は裏切ったのか?』という事実や貴之と雪が抱えていた“人に知られてはならない事情”という本当に知りたい情報がありませんでした。そして、その後…同業者から失踪前日に起きた京都でのホームレスの不審死と関係があるという情報などを知り、唯は蓼科へ向かいます。そこには、貴之の目元を残す自らと同じ名前である小松崎ゆいという女の子が待っておりました。もしかして、貴之は…。


ココから先…
失踪理由や雪と出逢った後の貴之がどのようにして生き延びて来たかという方向へ話が展開して行きます。貴之と唯が果たして会えたのかという点も含め、コレらを記してしまうと、本作の面白みを奪ってしまうが故に割愛しますが…この先も、貴之が唯から離れた後に関わりを持つことになった周辺人物達は皆ソレゾレ、「逢わないで欲しい」などと唯に懇願し、彼女は心の中で葛藤します。自分は、彼女がこの点をどう消化して突き進むか…コレが本作の良し悪しを決める重要なファクターだと思いました。


個人的には…
この点が何れかの立場に偏重し過ぎることなく、バランス良く描かれていたと思います。何故、11年という長い時間が必要であったのか…何を守るためにコレだけの時間が必要なのか、人間としての情という意味でも納得できますし、コレが明かされる終盤は火サスのクライマックスを想起させるようなある種の美しささえあります。しかし、今の人間を杓子定規とした場合、唯のように待ち続けられる女性はいるだろうか…と思うと、さすがに疑問。俺ならば、待てない。絶対に待てない。かなり特殊な設定も多く、文章だからこそ表現できる美しい世界を追求した作品だと思います。


しかし、コレに登場する人物は唯に限らず…
登場人物ソレゾレが超特殊な人間ばかりだったのは印象的でした。
ホームレスの父を持ち&元彼に付き纏われ続けた渋川雪。若くして六本木のチーママとなり、渋川雪などを束ねたものの、その後…夫と娘を精神障害者に殺害され、幸せを奪われ1人で生きることとなった天野言美。ドライバーの飲酒運転により、家族を失い、自らは車椅子での生活を余儀なくされた自然写真家の小松崎鶸矢…etc。【心の闇は十人十色】とばかりに、ミステリアスな部分を的確に設定した作者に対しては、『よくココ迄やった!』と褒めたくなる位です。さらに、天野言美が小松崎鶸矢との写真の出会いをキッカケに再びかつての自らを取り戻して行くというストーリーも言美の心の動きと写真が持つ芸術の本質に関する素晴らしさを的確に絡めており、個人的にはこの辺りも上手く仕上げたなと思いました。


ホント、面白かったと思います。
ただ、ソレでも満点の評価は与えられません。
追記に書いた理由もありますが、『登場人物の人生を盛り込み過ぎたかな』と思うのと、話の展開が完全に唯主導であること…ですかね。そのため、結果的には…『登場人物が使い捨て状態』となるのです。不要になった人物は死んで行ったり、死ななかった言美にしても、最終的には念願叶って鶸矢と逢ったものの…彼との出会いをキッカケに彼女の人生がどう展開したのかが書かれていないのです。


個人的には、他はともかく、せめて言美のことだけでも描かれていれば…
自分は満点の評価を下せたかもしれないのに…というのが正直な感想です。
でも、何通りもの人生が書いてあると…読むことで色々なことを振り返ることができるのも事実です。
時間があれば、是非読んでみて下さい。

〆

<Postscript>

私的な意見でありますが…
前編の時点で続編をチラつかせる作品は好きじゃないです。反則でしょう?
どこかで煮え切らないモノを包含してるはずで、騙されたって感じがするから。ただ、そのことを知らずに後編の本作だけを読んだ自分自身としては、前編の流れを知らなくても読める作品だなと思いました。むしろ、その背景を全く知らない方がミステリアスな感じでストーリーが始まるので、面白い気がします。

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