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ボトムアップ 

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Written  By  New-Can   [ 2007年7月16日 10:05 ]     

Category  05-A. 自作小説/エッセイ系      BBS


渋谷駅でJRから井の頭線へと乗り換えるとき、純は雨の日も敢えて一旦外へ出るようにしている。
それがもし夜なら、色々なストリートミュージシャンの路上ライブに遭遇するし、軽い息抜きを楽しむこともできる。山手線圏内の駅へ通勤し始めた春以降、こんな時間が加わったことに、純は密かに満足している。


そんな通勤生活を始めて2週間ほど経った頃、純は『1週間に4日以上、定期的に唄っているミュージシャンが1人だけいること』に気がついた。


彼の名前はケンジ。
ギターをかき鳴らしながらオリジナル曲を唄っているインディーズのミュージシャン。年齢は30代半ばの金髪の男性で、渋谷の他には池袋や柏などを活動拠点としている。ときには、柏で夕方から、渋谷で夜の9時からという具合に2箇所で精力的に活動しているときもある。


彼のホームページなどを通して、そんな情報を知って以来、『1度ぐらいは、彼の魂がこもった曲を5曲ぐらい聴き続けてみよう』という衝動に純は駆られていた。


雨が降ったある日の夜10時過ぎ、ケンジはいつもの場所で唄っていた。
ただ、天気のせいか、いつもに比べると人だかりはまばらだった。純は、『その日が来たかな』と思い、彼の正面に立ち止まり、曲を聴いてみることにした。平日の夜といえど、私服姿の人間が多い渋谷では、スーツ姿はよく目立つ。良いポジションだ。

「今日は、スーツ姿のサラリーマンの方が立ち止まってくれたということが僕はとにかく嬉しいです」

ケンジは唄う前に、純の方を向いてそう言った後、持ち唄の中からアップテンポの軽快な曲を選び、唄い始めた。仕事帰りの純にとって、耳に付く彼のポップなメロディは元気が沸く感じがして、心地良かった。そんな曲をさらに2曲ぐらい聴いた後、周囲を振り返ってみると、いつの間にかさらに10数人の人が集っていた。


そして、純の後では20代前半の若い女の子が1人で見ていた。彼女は純が振り向いたことに気付くと、純の左隣にサッと来て、いきなり話し掛けて来た。

「ケンジさんの唄をココで聴くのは初めてですか?」
「音楽は好きなんだけど、何曲も聴くのは初めてだね。毎日ここを通っているから、ずっと気になってはいたんだけどさ…」
「私、ケンジさんの唄が大好きなんです。学生時代の懐かしい時間を思い出すような感じがするんですよね」

すると、ケンジは純たちのお喋りに気が付いたかのように、彼自身の小学生時代の思い出を綴ったという、如何にも大切そうなバラードを唄い始めた。彼女が言う通り、いつまでも色褪せない思い出に満ち溢れた詞とそれを支えるメロディに純も懐かしさを憶えた。


その曲が終わると、周囲からの拍手と共に、10時台のケンジのストリートライブは終了した。
それからまもなくして、彼女は再び純に話しかけて来た。

「ところで、音楽がお好きだってことは、楽器も何かできたりするんですか?」
「ピアノなら弾けるかな。俺、昔はバンドをやっていたし、作曲もできるよ」
「えっ、そうなんですか。私、楽器ができないので、羨ましいです」

彼女は、少しだけ純のことを羨ましそうに見つめた後、話を続けた。

「話を変えてしまって申し訳ないのですが、ボランティアには興味ありますか?」

全く予想もしていなかった話の展開に、純は少し驚かされた。

「ボ、ボランティア?興味あるよ。いつかは携わりたいなとは思っているんだけどさ、正直な話、どのように携わって良いのか分からない世界という感じがするんだよね」
「実は、ピアノが弾ける方を探しているんです。私、週末は知的障害や自閉症を抱えている方たちを対象とした渋谷区のボランティア活動に10年近く携わっていて、そこでバンドみたいなものもやっているんです。もし、こんな世界に偏見がないようでしたら、彼らの前でピアノを弾いて頂けないかなと…」


名前も知らない初対面の女の子からの突然の誘い…
途惑うところはあったものの、彼女の表情を見ていると、演奏技術やボランティア云々といったことよりも、『ピアノを通して、今まで知らなかった世界でも周囲を楽しませる自信があるか?』という根幹みたいな所を純は問われているような気がしてならなかった。

「俺なんかで良ければいいよ」

純はこう即答した。
小学生の頃からピアノを10年習い、学生時代にバンド活動も経験した純にとって、答えは1つしかあり得ないと思った。音楽の楽しませ方も少しは知っているつもりだったし、彼らと一緒になって楽しめる自信もあった。


また、ケンジの唄を聴いた直後であったせいだろうか。
『知的障害や自閉症を抱えていようとも、心に障害を抱えている人間は誰もいないはず』という考えが純のことを支配していた。そして、『同じような可能性を秘めているにも関わらず、底辺レベルの生活を強いられている彼らの可能性を、音楽を通して、自分自身の力で少しでも引き出してみたい』という気持ちに大きく傾いていた。


こんなことを口約束だけで終わらせないようにするために、純は帰路も偶然同じだった彼女と井の頭線の車内でお互いの連絡先を交換することにした。純は彼女の『優子』という名前を見た後、彼女が自分の『純』という名前を見たことを確認してから、『近いうちに必ずまた逢おうね』と約束を交わした。

<Postscript>

今回の習い事のテーマである『豊かな生活』というイメージに合う作品か分かりませんが…
思い付いた限りの世界を少し描いてみました。とりあえず、例の件に関するニアフィクション系(※ノンフィクションとの間で揺れ動きながら書いている作品)です。自分の顔が少し赤くなってしまうような話、安売りしたくはナイんですけどねぇ…(;^^)


ちなみに、まだまだ続きは書けます。この作品ならば…。


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