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読み物レビュー <吉村昭編>
「漂流」 吉村昭著 [Amazon Link]
評価:「★★★★★」
江戸時代は、鎖国政策による影響もあり、近海周りにしか向かない船で水運業が行われていたようです(※参考:和船)。この政策に翻弄されたのが船乗りたちで、荒天による破船で漂流してしまう事故は少なくなかったそうです。
そんな時代における取調べ書をもとに…
作者の創造を織り交ぜたものが、この「漂流」という作品です。
主人公は土佐藩の(野村)長平。
彼をはじめ、4名を乗せた船が悪天候の影響で航行不能の状態に陥るのですが、帆柱を切り倒したりして、風や潮の流れのまま、命からがら辿り着いた先は無人島の鳥島。しかし、島へは上陸できたものの、大切な船を失ってしまいます。
着の身着のままの状態で、移動手段さえも失った…
長平ら4名はこの地で助けを待つことにするのですが、鳥島は火山島であるため、インフラ系は何も整備されておらず、飲み水さえありません。そんな状況でも、生き抜くためには火を使わずに何かしら食べる術を考えなければなりません。貝だけで生き延びることは困難だと悟った彼らは、島に生息するアホウドリを利用します。肉はアホウドリを利用し、彼らの卵を使って雨水を貯めます。さらに、釘などを使った釣竿で、たまに魚を引っ掛けます。しかし、飲食に利用できるものはこの程度。さらに、アホウドリは渡り鳥。時期が来ると島から離れてしまうため、「その間はアホウドリの肉を干物にして食べる」という大胆な発想で、1年という長いサイクルをどうにか乗り越える術を長平は編み出します。
しかし、この過酷で、偏った食生活による影響か…
長平の仲間は次々と奇病に侵されて、命を落とし、長平だけが島に残される形となります。
自ら命を絶とうとした長平でしたが…
それでも踏ん張ります。すると、その後…長平と同じような流れで、2隻の船がやってきます。
1隻目のメンバーは文字が読めるメンバーや泳ぎが得意な若手がいて、2隻目のメンバーは年配者であったものの、偶然にも生活に必要な火打石をはじめ、色々な道具を持った状態でやってきました。彼らは、前職の経験なども活かしながら、貯水池を作ったりして、少しずつ島のインフラを強化します。そんな日々の生活を通じて、メンバーの連帯感みたいなものも強くしていきました。
しかし、長平が漂着してから10年。
その鳥島へ肝心の船がやって来ません。2隻目のメンバーは、長平に一定のリスペクトをするものの、「何故、あなたのような方が自力で帰ってみようという考えに至らないのかが分からない」という疑問を持ち始めます。長平自身も、島に来てからの状況を考えると、船が助けに来る確率は限りなくZEROだと思い始め、一念発起します。「自力で日本に帰るしかない」と考え始め、島へ漂着したメンバーで流木や釘などを集め、無人島で船を造り始めます。そして、彼らはその船で青ヶ島経由で八丈島へ見事辿り着き、そこからはキチントした船で無事本土へと戻る…これが本作品の要旨です。
無人島生活の過酷さとその中でも生き抜こうとした…
長平らのアイディアに自分は感心させられた一方で、読み進めて行くうちに、「2009年以降も続くであろう不況を乗り越えて行くためには、自分自身の精神的なモチベーションを如何なる方向へ持って行くのが良いのか?」みたいなことを考えずにはいられなくなってきて、なんだか…長平にとても勇気づけられてしまいました…(;^^)
山田邦子女史のオススメの仕方が良くて読んでみた作品でしたけれども…
「好作品を教えてくれてありがとうございます!」という感じですね。彼女は全盛期と比べると、TVへの露出は随分と減りましたけれども、芸能界で色々な時代がありながらも上手く乗り越えてこれたのは、もしかしたらこの「漂流」という作品を知っていたという強みもあったのではないかと思わずにはいられません。
結局、不屈の精神は、いつの時代も普遍的なものでしかないんですよね。
それを1つの取調べ書をもとに、これだけ大きなドラマチックな作品に仕立てた吉村昭氏に自分は敬意を表したいですし、この作品を通じて感じたことを大切にしながら、「2009年以降を頑張って生きてみよう」と固く心に誓ったことは言う迄もありません。
そして、当然のことながら、今…
「吉村昭の他の作品も読んでみたい!」という思いに自分は駆られてます。
〆
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