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ひとりじめ
「趣味はゲームとインターネット」という感じで答えると、周囲はオタクと括りたがる。
今年、25歳となったサラリーマン、正晴もその枠に当てはまってしまう1人だ。
「好きな女性のタイプは?」と聞かれたとき、「愛咲ミナ」と正晴は答える。
同人系ならばともかく、特に興味がない人間には…
「誰、ソイツ……。もしかして、ゲームのキャラクター?」
という感じで、冷たい切り返し方をされる。
そこから、さらに踏み込んでくる人間はほとんどいない。
こんなとき、「芸能人の名前を口にしないオレって、オカシイ?」と正晴は切り返したくなる。
しかし、その後の反応が怖くて、いつもグッと堪えてしまう。
そんな正晴だが、高校時代、1人だけ好きになった子がいる。勿論、片思い。
誰が見てもカワイイ、ハルカ。いつも元気で笑顔が素敵なサッカー部のマネージャーだった。
ハルカのことを狙っているクラスメイトが何人もいることは、正晴も知っていた。
彼女に好意を寄せているメンツと一緒に下校していると、「どうすれば、振り向くか?」ということがしばしば話題になった。
しかし、運動神経がイマヒトツな正晴は帰宅部で引っ込み思案。
中途半端な駆け引きをするのが面倒臭かった。結局、ハルカとは文化祭の準備以外ではほとんど接点もなく、「これがオレに与えられた運命だ…」と悟り、卒業するまで、ハルカに対して特別なアクションを起こしはしなかった。
正晴に運命的な出会いが訪れたのは、それから数年経った大学2年生のときである。
この頃、正晴の周りではインターネット上でグループを組んで、チョットした冒険をしながら経験値を重ね、世界を平和にしていくロールプレイングゲームが流行っていた。その流れに乗って、正晴も時間があるときは、「榛名竜太」という名前で、友人やゲーム中に偶然知り合ったグループの中に入って、その世界を楽しむようになった。
あるとき、ゲーム中にグループの1人が、「竜太、俺のグループで一緒にやらない?」と誘ってきた。
折角なので、正晴はその言葉に従うと、そこにキュートな顔立ちをした女の子のキャラクターが加わってきた。
どこかのアイドルグループにいても不思議ではない容姿である。
彼女こそ、「一定レベルに達したメンバーがいると、グループに入ってくる」と噂になっていた愛咲ミナだった。
「皆さん、仲良くしてね!」とミナは挨拶をしてきた。
そして、彼女は持っていた魔法の杖を使い、左足を上げてジャンプすると、グループが幸運になる魔法をかけてきた。
正晴には、彼女の姿が魅力的に映った。
「もう1度やって欲しい?」とミナが尋ねてきたので、「もう1度、お願い!」と正晴はグループの中で真っ先に返事をした。すると、ミナは正晴の分身ともいえる竜太だけに魔法をかけてくれた。「ミナのような女性がオレのそばにいてくれたらな…」と、正晴はそう思わずにはいられなかった。
翌日、正晴は玩具屋へ足を運んだ。
魔法をかけるポーズをしている愛咲ミナのフィギュアが欲しくなり、衝動に駆られて購入した。そして、すぐに自宅へ戻り、部屋の机の上にそれを置いた。
正晴がミナの瞳を見つめると…
「ここへ来ることができて、嬉しいわ。いつまでも好きでいてね!」
と彼女が答えてくれたような気がした。「ミナのことをひとりじめすることができたんだ」と思うと、正晴は彼女のことが愛おしくて仕方なかった。
〆
<Postscript>
“バーチャル”をテーマに書くということで…
自らの価値観や先入観などは一先ず捨てて、できる限り客観的な視点で、そして妄想を膨らませられるだけ膨らませて書いたのが今回の作品です。
ウチの業界の話となりますが…
「アニメやゲームのキャラクターが載った小物を机の上にイッパイ並べる」…と書くと語弊がありますね。「自宅の部屋と同じように、リラックスできる雰囲気を作って仕事をしたい!」という意志がハッキリしているメンバーが結構います。自分の後に座っている若手もその1人なのですが、この彼が「極端な方向へとベクトルが傾いてしまったケース」というのが今回の妄想開始時の大前提です。
ちなみに、これを書き上げて気がついたことがあります。
「主人公の心を満たすにはどう導くのが良いのか…?」ということですかね。ハマる理由がよく分からなくなってしまうのです。仮完成させてから、「何か良い言葉はないかなぁ…?」と考え始めてから思いついたのが、「ひとりじめ」という言葉。これが閃いてからは、結構上手く纏められました。最後になりますが、自分はこのようなキャラクターではないので、あしからず…(;^^)
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