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- 【05-A. 自作小説系】の親カテゴリは、「05. オリジナル作品」 です。
有言実行
5年ほど前、「政治家を目指している」という同年代の女性と僕は偶然話をしたことがある。
それは確か、自宅近所で開催された飲み会で、30名ほどが参加していたものの、野心に燃える人間が足を運びたくなるような会合とはほど遠かった。
だから、彼女の口から…
「政治家」という言葉が飛び出したとき、「冗談でしょう?」と思った。「政治の力を身近に感じる機会がほとんどなければ、自らの声が直接届くこともない」と僕自身、思い込んでいるからかもしれない。妙な人間が目の前に現われたなと感じた。
さらに、彼女の容姿からは…
この街で生まれ育ったという泥臭さというか、逞しさのようなものが伝わってこなかった。「遠くの街からやって来た優秀な転校生」。そんな雰囲気が漂うばかりだった。
ただ、内心ではそう思っても、「遠慮したら負けだ」と考えてしまうのも僕の性格である。
思えば、政治を批判したことはあっても、称賛した記憶はほとんどない。それでも、出だしさえ上手く行けば会話くらいはなんとかできるのではないかと……。
悩んだ挙句…
「こんな会合に何故1人で参加したのだろう?」という素朴な疑問を僕は投げかけてみることにした。
「この街で育った訳ではないので…
駅周辺の雰囲気や人の様子を知るならば、飲み会が良いかなと思って、参加してみました」
彼女は落ち着いた口調でそう答えた。
穿った捉え方をすれば、「政治家を目指す人間らしい理由だな」とも思えた。外様である彼女の場合、この街には「地盤」がないはずだ。政治家になる前に、第二、第三の地元のような場所を作ることができなければ、夢が実現する可能性も自ずと下がってしまう。僕には、それが長い道程であるように思えて仕方なかった。地域の中で信頼を勝ち得て行くには、気が遠くなるほどの地道な活動が求められる。ところが、彼女はあっさりとこう否定した。
「興味さえあれば、政治家は簡単になれるものですよ」
それから数年後、僕は彼女の「顔」を久々に見る機会があった。
そう、街角の選挙ポスターである。政治家人生の第一歩として、彼女は区議会議員候補の1人として立候補していたのだ。たった1度しか話をしたことがないとはいえ、そんな人間がポスターに貼り出されていると、さすがに驚かずにはいられなかった。
その日以来、僕は彼女がどのような演説をするのか、気になって仕方なかった。
しかし、結局1度も聞くことができないまま、開票日を迎えてしまった。彼女の結果についての心配は杞憂に終わった。なんと、上から数えた方が早い順位で見事に初当選を果たしてしまったのである。ただ、僕にしてみると、この結果は素直に喜べるものではなかった。あのときの言葉の「有言実行」であったからである。
彼女は今、政治家としての道を歩んでいる。
しかし、区議会はあくまで地方議会の1つでしかない。そのためか、僕は区民でありながら、彼女が何をやっているのか、実は全く知らない。
数週間前、彼女のサイトをインターネット上で検索してみたところ…
活動状況がブログ上で定期的に更新されていることや僕の自宅の最寄り駅に事務所があることを知ることはできた。しかし、彼女が演説をしている姿を未だに1度も見たことがない。僕は早く、政治家らしい彼女の姿を見てみたい。
〆
<Postscript>
この話は実話です。よって、これ以上書いてしまうと…
「誰のことを書いているのか?」ということも分かってしまうような気がします。そのため、これ以上書くツモリはないのですが…とりあえず、自分自身、「今の政治の世界に疑問を持っていることだけは紛れもない事実」です。
ちなみに、この作品に関して…
習い事の宿題をキッカケに書いたものですが、言う迄もなく…「興味さえあれば、政治家は簡単になれるものですよ」という言葉をヒントに書いたものです。ずっと頭の片隅に引っ掛かっていた言葉なのですが…世の中、こんな状態で良いのでしょうか。自分自身は疑問に感じてます。そう申すのも、上記の方も含めて、昨今の政治家はどこか軽い気持ちで議員になってしまっている方が増えているような気がして仕方ないのです。「人民のために一生懸命勉強をし、人民の目線で正しいことを実現してくれる…そんな方に政治家として頑張って欲しい」のですが、ここのところ地方議員や都道府県議員は勿論、サラリーマン生活さえ一切経験することなく、いきなり国会議員になってしまう方ばかり。「厚顔無恥」としか言いようがありません。
こんな状況では、「政治で何か変わるのか?」と問われても…
「何も変わる訳がない」としか言えませんよ。恵まれている人たちには、「平凡な毎日を生き抜くことが精一杯という状況が、果たしてどんなものなのか?」ということは、よほど本気になって自分たちとの距離を縮めようとしない限り、永遠にこのパズルを解くことができないと思います。「理解しようとするだけでなく、理解してその状況を適切な言葉で説明することができる人」でなければ、政治家は務まらない職であるはずです。そんなごく当たり前のことが分からない、この国の政治家に、大きな仕事ができるとはとても思えません。今の日本なんて、「所詮は政治ごっこをしてるだけの幼稚な国」ですよ。いい加減、「このままでは日本は隣国の属国となってしまう…」というくらいの危機感を持って、1日でも早くクリーンな政治を実践してもらいたいです(※敢えて不適切な発言をしました)。
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仮面
今朝の朝刊に折り込まれたチラシの中に、とても明るい色調のものが1枚紛れ込んでいた。
早苗はそれを手にとって、読んでみた。お店の名前は、メラービリョージョ。自宅の最寄駅の2駅隣に、今日オープンするらしい。『あなたは容姿にコンプレックスを感じたことはありませんか?』というキャッチコピーが大きな文字で書かれている。
その店では、容姿のパーツ交換から身長の伸縮まで、1箇所あたり2万円でできるらしい。
たとえ、それが顔の交換であったとしても、アンパンマンの顔をバタコさんが新しいパンを投げて交換するような仕組みで瞬時に実現が可能だという。
ただ、パーツ交換自体が容易であろうとも十分な注意が必要だ。
一旦、交換してしまうと、最低2週間は元に戻すことができないらしく、組み合わせたときの体型バランスについても保証の限りではないようだ。その旨はキチント記載されている。
これらの但し書きは抑制力があり、早苗を躊躇させた。
早苗は生まれてから25年、顔にコンプレックスを感じながら生きてきた。
小学生の頃から、「オマエの顔って、表情がなくて、なんだかノッペラ坊みたいだな」とクラスメイトの男子に散々言われた。
あのときの記憶が強く刻み込まれているせいだろうか。
体型は標準的だと思ってはいるものの、容姿は今でも全く自信が持てない。今まで彼氏1人できたことがなく、男もそんな心を見透かしているのだろうか、言い寄ってはこなかった。
早苗が物心がついた頃には…
父は髪の毛が完全に後退し、見かけ的には平凡以下に成り下がっていた。母も笑顔が少なく、その間に生まれた娘では仕方がないことなのだろうと、半ば諦めに似たような気持ちが早苗の心をずっと支配していた。
気がつくと、早苗はメラービリョージョのチラシを繰り返し読んでいた。
「もしかしたら、私にとっては千載一遇のチャンスかもしれない」という気分になってきた。思い切って、お店の様子を見に行ってみようと早苗は決心した。
店内はオープン初日ということも影響していたのだろうか。
1階から3階まで、どこのフロアも非常に賑わっている。すれ違う客の顔をチラチラ様子見してみると、早苗から見ても顔が冴えない男性客と女性客ばかり。世の中には、同じようなことで悩んでいると思われる人がこんなにもいるのかと改めて思い知らされる。
そんな人たちの流れを横目で見ながら、早苗も好みの顔の「品定め」をしてみることにした。
表情が豊かそうな子がイイなとは思っていたが、さすがに華やかな顔が多い。女性タレントのオタクっぽい男性客は、持参してきたデジタルカメラで好みの女性の顔写真を真剣な眼差しで何枚も撮っている。
それから10分ほど経ったとき…
バラエティ番組によく出演している女性タレントの顔に目が釘付けになった。
テレビで観る限り、彼女の体型はスレンダーという訳ではないが、いつも明るく元気で大きな声で笑う。早苗に決定的に欠けている明るさが彼女には漲っている。男性から見ても好印象を与えてそうな気がする。
早苗は自分自身の顔を彼女のものへと置き換えた姿を頭の中で想像していた。
「お客様、よろしければ、その顔をお試ししましょうか?」
男性店員が横から声をかけてきたので、早苗は思わず反射的に頷いてしまった。
「では、こちらのお試しルームへどうぞ。お試しルームでは、お客様の全身写真を撮った後、その画像を入れ替える形で、パーツ交換後のイメージを色々なアングルから確認することができます。もし、お客様がお気に召されたようでしたら、こちらの番号札をレジの方へお持ち下さい。パーツ交換につきましては、購入前に誓約書をお客様に記入して頂いた後、レジの奥にある部屋で作業を行います」
お試しルームの音声案内の通り、早苗は全身写真を撮ってみた。
そして、画面のメニュー案内に従う形で、自分自身の顔をお目当ての女性タレントのものへと入れ替えてみた。「証明写真を撮るような感覚で色々なものが試せるな」と思っていたが、1枚目から早苗の予想以上にサマになっている。
「これだ!」と思って、お試しルームを出たそのときだった。
勤務先の男性後輩社員の姿が一瞬、目に入ってしまった。
彼の年齢は、早苗の2つ下。
少し老け顔でお世辞にも格好良いとは言えないが、『気配りができるし、とても優しくてイイ子』と女性社員の間でも性格は評価されていた。しかし、こんなところで見かけるとは思ってもいなかった。
「もし、このまま女性タレントの顔に交換して出社してしまうと、彼にカラクリがバレてしまう…」
と思った瞬間だった。枕元で目覚まし時計が激しく鳴り響き、早苗は妙な夢から覚めた。
現実でなくて良かったという安堵感など、どうでも良かった。
夢の世界でさえ、変身願望を叶えることができなかった自分自身に対して、早苗はため息をつかずにはいられなかった。
〆
<Postscript>
今回の習い事の宿題は、『転生』がテーマだったのですが…
何故こんなものが浮かんだのか、自分でもよく分かりません。突然でした…(;^^)
こういったものは、勿論書いたことがありません。
試行錯誤だったのですが…思った以上に面倒臭かったですね。現実と異なる世界を表現する際は、こちらから色々と提示せねばならないですし…。そんな訳で、粗探しをしてしまうと、修正せねばならない箇所があちこち出てくるのですが、今回は敢えてそれを放置した…オリジナルにかなり近い形で掲載してます。。。
ちなみに、今回の早苗はとても気弱な子ですが…
「こんな性格の子は、夢の中でもきっとこうなんだろうな」と自分は思ってます。そんな子に対して、仮面を被らせてあげることも必要なのでしょうが…敢えて、被らせておりません。被らせないことが自分自身は大事だと思うし、早苗自身も気付くことがあるだろうと思うからです。
結局、こういったことは、繰り返さないと自分自身を変えようという発想へは至らないんですよね…(;^^)
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チョコレートケーキ
夕食を済ませた一樹は…
「今日はデザートがあるからね」と母に言われ、冷蔵庫の扉を開けてみた。
見覚えのあるショートケーキとチョコレートケーキが1切れずつ、皿の上に乗っていた。
一樹の母は、駅前のケーキ屋さんと幼馴染で、店で売れ残ってしまったケーキをたまに貰ってくることがある。
「一樹、冷蔵庫を早く閉めなさい」
背中越しに母の声が聞こえた。
ケーキの皿を慎重にテーブルの上に置くと、妹の美沙が嬉しそうにそれを覗き込んだ。
その真剣な表情を見て、どちらを食べるか、一樹も考え始めた。
美沙はショートケーキが大好きだ。
生クリームと一緒にいちごを食べることができるのがその理由らしい。
ただ、小学校4年生になって、嗜好が少し変わり始めている。
この間は、「お母さん、たまには違うケーキを貰ってこれないの?」と生意気なことを言っていた。
「お兄ちゃん、どっちがいい?」
美沙は一樹に考える間を与えずに訊ねてきた。
こんなとき、どちらを食べたいか、美沙は必ず決めている。
一応、妹という立場を考えているのか、必ず確認はしてくる。
しかし、それは「絶対に譲りたくない」という意思表示であり、形だけのものでしかない。
「チョコレートケーキが食べたいなぁ…」
「えーっ」
思惑が外れて、美沙は驚いている。
「この間の日曜日にみんなで渋谷へ行ったとき…
お兄ちゃんはチョコレートケーキを食べたばかりじゃん?」
「渋谷は渋谷、俺が駅前のケーキ屋で1番好きなのは、このチョコレートケーキなんだよ!」
「お兄ちゃんのウソつき。この間、お兄ちゃんはなんて言ったか覚えてる? 『俺が駅前のケーキ屋で1番好きなのは、このショートケーキなんだよ!』とか言って、美沙はお母さんに我慢させられたんだよ!」
「じゃあ、先週の金曜日のことを覚えているか?
テレビで野球を観ようとしていたのに、美沙のためにドラえもんに変えてやっただろ?
今日はその借りを返してもらうときなんだよ!」
「テレビとケーキは別でしょ?」
話題が逸れ始めた。台所で皿洗いを始めていた母が手を止めて、やってきた。
「2人とも、喧嘩せずにさっさと決めて食べなさい。喧嘩をするなら、両方とも私が食べちゃうわよ!」
「お母さん。だって、お兄ちゃんが美沙にウソをついたんだもん…」
「そうなの…。じゃあ、今日はお母さんが決めるわよ。
チョコレートケーキは美沙。ショートケーキは一樹。イイわね?」
「わーい」
「いきなり間に入ってきて、それはねえだろう?」
「一樹、お母さんも覚えているわよ。お兄ちゃんなんだから、今日は我慢しなさい。
2切れしか貰えなかったから、お母さんは食べたいのを我慢しているのよ。
嫌ならケーキは食べなくてもいいの。お母さんが食べるから」
「分かったよ。クソッ…」
満足げな笑みを浮かべ…
「オイシイ」と言いながらチョコレートケーキを食べる美沙の横で、一樹はショートケーキを食べ始めた。
チョコレートケーキを食べられなかった悔しさを押し殺しながら、一樹は口の中にこびりついた生クリームをなめた。
〆
<Postscript>
先日の習い事に合わせて、久し振りに書いてみたものです(※原稿用紙4枚程度)。
「兄弟でどちらかを選ばなければならないときに、弟が不利にならないようにすること…」的なことを何かしら書こうと思っていたのですが、ウチの兄弟は食べ物に関していえば、あまりこんなことはしてこなかった記憶があり、違和感がありました。そんな訳で、“兄妹”に切り替えて、これは書いてます。
ポップ?なものを公開するのは恥ずかしいんですけど、たまにはありですかねぇ…(;^^)
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