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Article Titles
- 【05-A. 自作小説/エッセイ系】の親カテゴリは、「05. オリジナル作品」 です。
ひとりじめ
「趣味はゲームとインターネット」という感じで答えると、周囲はオタクと括りたがる。
今年、25歳となったサラリーマン、正晴もその枠に当てはまってしまう1人だ。
「好きな女性のタイプは?」と聞かれたとき、「愛咲ミナ」と正晴は答える。
同人系ならばともかく、特に興味がない人間には…
「誰、ソイツ……。もしかして、ゲームのキャラクター?」
という感じで、冷たい切り返し方をされる。
そこから、さらに踏み込んでくる人間はほとんどいない。
こんなとき、「芸能人の名前を口にしないオレって、オカシイ?」と正晴は切り返したくなる。
しかし、その後の反応が怖くて、いつもグッと堪えてしまう。
そんな正晴だが、高校時代、1人だけ好きになった子がいる。勿論、片思い。
誰が見てもカワイイ、ハルカ。いつも元気で笑顔が素敵なサッカー部のマネージャーだった。
ハルカのことを狙っているクラスメイトが何人もいることは、正晴も知っていた。
彼女に好意を寄せているメンツと一緒に下校していると、「どうすれば、振り向くか?」ということがしばしば話題になった。
しかし、運動神経がイマヒトツな正晴は帰宅部で引っ込み思案。
中途半端な駆け引きをするのが面倒臭かった。結局、ハルカとは文化祭の準備以外ではほとんど接点もなく、「これがオレに与えられた運命だ…」と悟り、卒業するまで、ハルカに対して特別なアクションを起こしはしなかった。
正晴に運命的な出会いが訪れたのは、それから数年経った大学2年生のときである。
この頃、正晴の周りではインターネット上でグループを組んで、チョットした冒険をしながら経験値を重ね、世界を平和にしていくロールプレイングゲームが流行っていた。その流れに乗って、正晴も時間があるときは、「榛名竜太」という名前で、友人やゲーム中に偶然知り合ったグループの中に入って、その世界を楽しむようになった。
あるとき、ゲーム中にグループの1人が、「竜太、俺のグループで一緒にやらない?」と誘ってきた。
折角なので、正晴はその言葉に従うと、そこにキュートな顔立ちをした女の子のキャラクターが加わってきた。
どこかのアイドルグループにいても不思議ではない容姿である。
彼女こそ、「一定レベルに達したメンバーがいると、グループに入ってくる」と噂になっていた愛咲ミナだった。
「皆さん、仲良くしてね!」とミナは挨拶をしてきた。
そして、彼女は持っていた魔法の杖を使い、左足を上げてジャンプすると、グループが幸運になる魔法をかけてきた。
正晴には、彼女の姿が魅力的に映った。
「もう1度やって欲しい?」とミナが尋ねてきたので、「もう1度、お願い!」と正晴はグループの中で真っ先に返事をした。すると、ミナは正晴の分身ともいえる竜太だけに魔法をかけてくれた。「ミナのような女性がオレのそばにいてくれたらな…」と、正晴はそう思わずにはいられなかった。
翌日、正晴は玩具屋へ足を運んだ。
魔法をかけるポーズをしている愛咲ミナのフィギュアが欲しくなり、衝動に駆られて購入した。そして、すぐに自宅へ戻り、部屋の机の上にそれを置いた。
正晴がミナの瞳を見つめると…
「ここへ来ることができて、嬉しいわ。いつまでも好きでいてね!」
と彼女が答えてくれたような気がした。「ミナのことをひとりじめすることができたんだ」と思うと、正晴は彼女のことが愛おしくて仕方なかった。
〆
<Postscript>
“バーチャル”をテーマに書くということで…
自らの価値観や先入観などは一先ず捨てて、できる限り客観的な視点で、そして妄想を膨らませられるだけ膨らませて書いたのが今回の作品です。
ウチの業界の話となりますが…
「アニメやゲームのキャラクターが載った小物を机の上にイッパイ並べる」…と書くと語弊がありますね。「自宅の部屋と同じように、リラックスできる雰囲気を作って仕事をしたい!」という意志がハッキリしているメンバーが結構います。自分の後に座っている若手もその1人なのですが、この彼が「極端な方向へとベクトルが傾いてしまったケース」というのが今回の妄想開始時の大前提です。
ちなみに、これを書き上げて気がついたことがあります。
「主人公の心を満たすにはどう導くのが良いのか…?」ということですかね。ハマる理由がよく分からなくなってしまうのです。仮完成させてから、「何か良い言葉はないかなぁ…?」と考え始めてから思いついたのが、「ひとりじめ」という言葉。これが閃いてからは、結構上手く纏められました。最後になりますが、自分はこのようなキャラクターではないので、あしからず…(;^^)
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恵まれた島
朝1番のフェリーに乗船し、およそ1時間。
汽笛の音に起こされ、翔真は客室の外へ出た。そして、船尾から進行方向を確認すると、北海道旅行中に訪れたいと思っていた島が目の前にあった。
北海道の日本海側には、5つの有人島が存在する。
その中で最も面積が小さな島こそ、翔真が訪れようとしている焼尻島である。
かつてはニシン漁で栄え…
現在もカズノコの国内最大の加工地として知られる留萌から北へ50Km。
羽幌という港町がある。そこから、さらに西へ25Kmの距離に、この島は位置する。
交通の便がいいとは言い難いものの…
夏場になると、ウニ漁が最盛期を迎えることもあり、羽幌からフェリーに加えて高速船も就航する。短い間ではあるが、島は賑わう。
ところが、秋から冬にかけては、フェリーも1往復。
海がしけることも多く、欠航することが多い。そんな厳しい環境もあってか、島民の高齢化は進んでいる。人口は300人を切り、島の中央部にある広大な丘の上で放牧されている食用羊の方が数では上回っている。
焼尻港へフェリーが到着すると、翔真を含め、10数名の客が下船した。
朝1番の船便ということもあってか、人の数は少ない。それでも港には、「島内の観光案内は任せて下さい!」というプラカードを掲げている人がいた。翔真が尋ねてみると、1時間ほどで1周できる島の案内を1,000円でやってくれるとのこと。折角なのでお願いすると、その姿を後ろから見ていた他の観光客も続いた。
結果、4名のグループで焼尻島を巡ることとなったのだが…
ガイドが最初に連れて行ってくれた場所は、なんと島内唯一のゲートボール場だった。ここは島民の憩いの場で、非常に重要なところらしい。
その後も、車が最も標高が高いところを通ると…
「今、車が通っている道は焼尻のハイウェイです」。札幌から嫁を貰った家の前を通過する直前は、「宝くじを当てるよりも難しいことをやってのけた家です。皆さんあやかって下さい」とこんな調子が続く。ここまで細かいと、さすがに車内は笑いがたえない。観光案内というよりも島内紹介という方が正しいだろう。
さらに、車は島内唯一のスナックや小・中学校などへも立ち寄った後…
「皆様に、伝えておきたいことがあるので、最後に小回りで1周します」と口にしてから、ガイドは急に真面目な話を始めた。
「このまま何も策を講じなければ…
人口が300人にも満たない焼尻島が無人島になってしまうのは時間の問題でしょう」
どんな話を始めるのかと思いきや、島が直面している難問をズバリ口にしたのである。
「僕の個人的な意見ですが、焼尻島が無人島になるようなことがあったら、犯罪者を更生する場として、活用してほしいです。ご覧の通り、丘には羊がたくさんいて、無人島にもなってしまえば、海でウニは取り放題。日本全国探しても、焼尻島のように自然と動物に恵まれた島はそうありません」
日本も含め、先進国では流刑が絶対的不定期刑に当たるため、現在禁止されている。
ガイドの更生場としての活用案は、おそらく刑務作業の合間の気分転換という意味合いもあるのだろう。
「犯罪者も同じ人間です。焼尻島に来れば、忘れていた何かを思い出すことでしょう」
この話を聞いて、翔真は思った。
「故郷を誇りに思い、生きて行けることが人間にとって、1番幸せなことなのではないか」と…。
〆
<Postscript>
“海”や“船”をテーマに書くということで…
「海をサラリと混ぜる感じで書こう!」と最初は思っていたのですが、話がイマヒトツ膨らまなかったので、2003年に北海道を1人旅した際の話を取り上げる形で書いてみることにしました。
都会で生まれ育ちった自分としては…
離島のライフスタイルに、とても興味があります。色々なものが揃う便利な時代でありながら、その流れにごく自然な形で抗い…自分たちは、海を隔てたところでシンプルな生活を追求しながら毎日を過ごしているのです。焼尻に限らず、離島はどこも島民の高齢化などの問題を抱えているのでしょうが、「言葉で表現するには難しい素敵な魅力がイッパイ詰まっているのだろう…」と思ってます。
そんなチョットした好奇心や色々な何故を知るために…
自分は、中学生のときに家族で隠岐へ、その後も沖縄やバミューダ、伊豆大島…最近では、琵琶湖に浮かぶ沖島など、色々な島へ足を運びましたが、このときの焼尻、そして隣の天売の印象が特に記憶に残ってます。
両島共、小さな島なのですが、冬の日本海側の厳しさによって育まれた景色は…
旅人の想像力をかき立てるには十分でした。両島合わせて、たった1泊2日の滞在でしたが、個人的にはもっと長い時間を過ごしてみたい場所でした。
叶うものならば、もう1度両島へ行く機会を作りたいし…
そのときは、「妻も是非連れて行きたい!」とそう思っている場所の1つです。
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