第59回のテ〜マ:【Human Machine】(2004.09.20.)


 久し振りに、このコーナーの大きな更新に“3ヶ月もの空白”を作ってしまいました。その間の生活に関しては、【とにかく忙しかった…】という言葉に尽きると思います。【電車の中で携帯メールを打つ気力さえも萎えている…】そんな自分自身、アナログな生活を欲しているのかもしれないとさえ思うこの頃です。

 昨夏、いや…もっと前から始まっているこの生活…実は、22時より前に帰宅できるコトがホトンドありません。逆に、0時以降に帰宅する方が普通の生活みたいな。所属会社ではこなさなくて良い様なリーダー的業務もこなしている現状を思うと、個人的には致し方ないと思っております(でも、所属会社的には自分の現状を知ろうとせずに“残業減らせ”の一点張り…)。

 然しながら、その一方で…【人間の肌は、23時〜2時に睡眠をとると、肌の保全機能が1番機能する】と言いますから、そんな生活とも全く無縁である自分の身体の将来を鑑みると、人間としての自分自身に危機感を感じずにいられなくなっております。そして、コレだけ働いているため…自分自身のプライベートの時間は限りなく皆無に等しく、自身のスキルアップを行うコトさえもが許されていない(少なくとも、他人と比べて圧倒的に不利)と言っても過言ではない様な状況となってしまっております。

 それに伴い、【このままでは、自分自身の人生を他人に動かされるだけ動かされて、俺はまるで機械の様な一消費物となるのは確実だな…】と思う様になり、【何年経っても、キツサが変わらない仕事に取り組む上で、ドコに価値観を見出さなければいけないのか…】というコトに対して、ココ数ヶ月…自分自身の中で、次々と沸いてくる欲求を抑え付けられなくなっておりました。。。

 そんなときに…実は、精神的充足感を満たすべく、日々の移動時間を利用し、読書に耽っていた期間が3〜4日程でしょうか…ありました。行き帰りの列車の中で見た吊革広告の宣伝文句に興味を持ったのが購入したのがソモソモのキッカケだったのですが…その作品の著者は横山秀夫氏、タイトルは【出口のない海】。以前、その後ブームとなった“セカチュウ”に関して辛辣な迄に論評致しましたが、この作品に関しては、【1度は読むべき!】と推そうと思います。

 ちなみに、この小説に関して…僭越ながら、どんな内容かを大変簡単に書かせて頂きますと、【甲子園の優勝投手であった並木浩二が大学に入学後に怪我。投げられない日々が続き、魔球を開発し、自らが復活する姿を信じていたものの、段々と戦火が激しくなり、国家のために特攻隊の一員になることを余儀なくされる…】という内容です。戦争モノであるため、さらに“特攻”が絡んでいるというテーマであるため、【そもそも読みたくない…】という方もおりましょう。。。

 目を逸らしたければ、逸らせば良いと思います。ハイ…。ただ、この並木くんが課された任務は、九州各地から飛び立った空軍のポンコツ飛行機による体当たりの“神風”と呼ばれた特攻ではなく、回天と呼ばれる人間魚雷による海軍の特攻任務(※周南市:回天記念館)。これは、あまり知られていないと思います。事実、自分自身もそんな歴史があったコトをこの作品を通して、初めて知りました。。。

 ちなみに、飛行機と回天の違いに関してですが…飛行機は、帰りの燃料がナイとはいえ、数字的にはある意味で助かる可能性があるといえばあるのですが、この回天に関しては、まず…搭乗した時点で、操縦する以外に身動きがホトンド取れなかったとのコト…。さらに、【潜水艦から発射された時点で潜水艦に2度と戻るコトができない上、唯一の出口に関しても、水圧のために自らの力で開けるコトができない】という…つまり、発射された時点で自爆するか、艦内で窒息死するかの何れかが運命付けられていたという違いがあります。。。

 それ故に…回天には負の面はとかく多く、訓練中にも度々事故が発生し、若き隊員を死に追いやるコトもありました。人間が操作すれば、より正確に攻撃できますし、まさに“Human Machine”的な発想は素晴らしかった(敵のレーダーをかわせるという点においても、機密度が高くなった模様)のですが、【あまりに極致的】であり過ぎました…。さらに、神風同様、“故障する確率も高かった”様で、任務を遂行できずに生還した隊員も多いとのコト…。少しでも係わった者の人間の命を回天は色々な形で弄んでしまった…非常に悪しき兵器でありました。

 こんな兵器には…現代人の想像の範疇を超えた自分自身との戦いに打ち克たねば、搭乗するコトはできません。そんな訳で、回天に纏わる起こり得る事象パターンに関しても、本作品では余すコトなく触れられており、並木くんの運命に関する最後の結びに関しても…思わず、涙を誘われるモノでありました。

 …全体を通じての感想と致しましては、この【出口のない海】という作品は、人間描写の比重が高く、回天の詳細を知りたかった方には物足りないモノかもしれません。然しながら、その人間描写が愛であったり、野球部の仲間の愛であったり、隊員達にしか分からない特異な環境であったり…読者の視点を器用な迄に分散させた点が、この作品の凄い所だと思います。また、テーマ自体が、死を描かねばいけない状況の中、死を区切りとせず、それを通じて、読者がどう感じるかを図っていたかの様な間も良かったです。色々な意味において、自分自身にとって非常に参考になった作品でありました。個人的には、時間があれば、本作品で知るコトになった横山秀夫氏の他の作品に関して、機会があれば是非共読んでみようと思っております。

 そして、こんな作品を読んでしまった以上…今の仕事がある程度の区切りが付いた後の恒例の?長短あれこれある?単独国内旅行の目的地は“決まったかなぁ…”という感じです。できるだけ早いうちに、徳山から海を渡り、発射訓練基地訓練所跡が残っているらしい大津島に行ってみようと思っております。。。

 …最後になりましたが、皆さんの“精神的な体力”はどんな形で癒されるのか、自分は知る由もありませんが、もし、疲弊してしまったときには…【読書を行うコトで、他人に課せられたテーマを自分自身で少しずつ消化してみる…】という方法を採ってみるのも良いのではないでしょうか?(コソっと提起) 個人的には…そんなときこそ、死と直面せざるを得ない様なテーマであればある程、良いと思いますが、その作品が【出口のない海】であれば、今回ココで取り上げた本人としても特に嬉しい限りです。以上にて、【今回の積み残しは無】と致します。

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