第20回のテ〜マ:【尾瀬散策記等 1】(2005.08.25.)


 1ヶ月程前に、大学時代の友達と念願であった尾瀬を散策してきました。「日本人であれば知らない人はいない」という位に有名な観光地ではありますが…自分が尾瀬を散策する際に目論んでいたコトは、「福島県と群馬県の県境を歩いて越えるコト」。この目的を達するためには、尾瀬に幾つかある山小屋のどこかで宿泊すべきと思われ、「1人で宿泊するのもなぁ…(;--)」という躊躇いがありました。こんな話を春頃でしょうか…。今回一緒に行った友達としながら、「いつか行こうね…」というコトになったのですが、意外と早く来訪するコトができました。やはり、些細なコトでも自分の思いは伝えるべきですね…(笑)



銀山平に向かう遊覧船

 さて、尾瀬へアプローチする方法に関してですが、幾つかあります。例えば、群馬県側の鳩待峠や大清水、福島県側の沼山峠…等。これらは一般的なルートであり、特に鳩待峠に関しては戸倉で駐車した上での来訪も容易であるため、車で来訪する方も多々おられます。

 ただ、車で来訪した場合の散策可能範囲は、所詮これらの地点から徒歩数時間程度…。よって、今回も…当然の如く?、色々な意味で融通が利く列車&バスでのアプローチを採るコトに決めていた訳なのですが…一捻り加えてみました。首都圏在住の人間であれば、まず採るコトはないであろう【新潟県側からアプローチ】です。

 以前から構想だけは暖めていたルートなのですが…このルートの良い所は、奥只見湖(銀山湖)で遊覧船による観光もできるコト。逆に、欠点はアプローチするための交通機関が不便なコトに尽きるかと思います。

 なんせ、上越線の浦佐駅と奥只見ダムを結ぶ南越後観光バスの路線は、午前/午後1本ずつ(⇒ダイヤ)。さらに、その奥只見ダムから先に関しても、画像@の様な遊覧船で尾瀬口という“簡易船着場”の様な辺鄙な所迄渡った後、沼山峠方面へ向かうバスに乗り換えるコトになるのですが、この奥只見ダムより先の区間も実は3本/日(⇒ダイヤ)。しかも、朝の1本はホボ利用不可と言っても過言ではなく…結局、こちらも事実上2本/日といった所でしょうか。



遊覧船@尾瀬口

 まさに、要所要所での乗り遅れが“運命の分かれ道”となりかねないルートと言えましょうが、途中には温泉も幾つかある(芋川折立大湯栃尾又)ので、万が一遅れたら、「とりあえず温泉にでも浸かりに行こうか…」と予定を変えるのも、また面白いかもしれませんね。首都圏から本ルートにて御昼前に登山道に入る場合は、【始発の上越新幹線乗車が絶対条件】となりますから…(;^^)

@〜D:浦佐→奥只見ダム→尾瀬口(2005/07/16)

 浦佐から自分達が約1時間15分程乗車した路線バスは、元々ダム建設用の道路で、全長22Kmのうち約18kmは合計19のトンネルで構成されている「モグラ道」とでも言うべき「奥只見シルバーライン」経由でした。

 実は、トンネル内に分岐点もあるこのシルバーラインは、昭和29〜32年にかけて工事が行われ、厳しい冬も厭わない作業だったそうです。その名残かどうか迄は分かりませんが、大型車同士の対向は困難な道幅であり、道の凸凹は酷くて眠れないし…トンネル内を滴る雫が冷えているせいか、次第にクーラーよりも、窓から伝わる外気の温度にハッとさせられるし…(;^^)

 運転する上で、難道とは思いませんが、トンネルを出た途端に窓ガラスが曇るし、「暗い歴史が感じられる様な閉塞感」は精神的に滅入るので、個人的には出来る限り通らずにいたいという感じではありましたかね(※尚、トンネルを通過したくなければ、道幅はシルバーラインよりも狭い枝折峠経由となります)。

@奥只見湖T

A奥只見湖U

B奥只見湖V

C奥只見湖W

 さて、現在の所、総貯水量が日本一(←岐阜県に建設中の徳山ダムが完成する迄)である、東洋一の人造湖・奥只見ダムは、2000年に映画としても公開された「ホワイトアウト」(真保裕一著)内における奧遠和ダム(※実際の撮影地は黒部ダム等)としても知られております。



D奥只見湖X

 ココは画像の通り、周囲は山々に囲まれ、大変静か。北海道にある人造湖であるかの様な、この雄大な景色には誰もが魅了されるコトでしょう。夏季故の…この青々とした姿にも温もりがあり、良い雰囲気です。でも、残雪が残る表情も見てみたい気持ちも山々…(;^^)

 ちなみに、今回は遊覧船から景色を眺めましたが、船の就航期間は6月〜10月頃迄。人造湖を巡っているにも関わらず、リアス式海岸沿いの様な景色も現れたりして、非常に面白かったのですが、唯一の心残りは…大雨が止んだ直後故、水が汚れていたコト。人間の手によって、命を吹き込まれた湖ではありますが、怪我をしている動物を見ている様な気がして、心が少々痛みました。。。

E〜J:尾瀬口→小沢平→渋沢大滝(2005/07/16)

 奥只見ダムは新潟県と福島県の県境を跨っており、隣の福島県に入るのは尾瀬口にて乗車する国道352号線の「樹海ライン」と呼ばれる所を通過する路線バスから…。ちなみに、この路線は時刻表やその他情報を見ると、【奥只見郷インフォメーションセンターにて要予約】となっておりましたが、実際行ってみると…ココから乗車したのは自分達も含めて8名いたものの、皆、浦佐から一緒。そんなモノでしたよ。そんな…(;^^)

 ちなみに、自分達が下車した所は小沢平(読み:こぞうだいら)。尾瀬口からの所要時間は約20分程で、既に廃屋化したかの様な人気のない山小屋(※参考:尾瀬の山小屋)が1件あるだけの所…。ココでは、自分達ともう1名の計3名が降車しました。

E沢の音は心地良い…

Fバランス崩すな!?

G沢登り中…

H梯子もある…

 さて、群馬県の鳩待峠に抜ける散策道のスタート地点となった小沢平に関してですが、一面哀愁を漂わせる笹の原…という所です。おそらく、重い荷物を背負いながら、誰もがやや疑心暗鬼になりながら、小沢平を発つのでしょうが…安心して下さい。程なくして只見川が現れますし、「この川に沿って歩いて行くのだなぁ…」というコトが確信できます。



I渋沢大滝






J絹糸の滝?

 …でも、「そんなに人気がないの?」という感じでしょうが、本当にこちらのコースは人気がありません(※擦れ違った方は1グループ3名)。ブナの原生林に囲まれた散策道をマイペースで歩けるのは気持ち良いのですけれども…(;^^)

 加えて、随所にある上記画像E〜Gの様な、大小の沢(※Fの橋にはワクワクしましたね)の音に関しても心地良かったりしますし、たまに…足下を見ると、蛙が元気良く跳ねていたり、陸地で遊び過ぎ、必死になって水辺に帰ろうとしている蟹が歩いていたり、山側からは蛇が「俺も動くか…」という感じで顔を出す…。こう書くと、面白そうですが、今回は散策の直前に大雨が降ったそうで、散策道が沼になっていたり、崩れていたり…あちこちに神経を使って、実は大変だったのですけどね(※崖はナイので、身の危険はありません)。

 ある種、アドベンチャー要素さえも感じられた、こんな道を経由したのには、幾つか理由があったのですが…1番の理由としては、素通りするには勿体無い、秘瀑といった趣を残す滝に行き易かったからです。

 その滝の名は…渋沢大滝と言います。渋沢小屋方面から向かう場合、分岐点を右折し(※右折せずに天神田代に向かう道は斜度がとてつもなくキツイです)、徒歩20分程で到着するのですが、この散策道に関しても凄かったですね…。上記画像Hの様に梯子を登ったり、行く手を阻む滔々と流れる沢を跳び越えたり…。

 そんな所を1つずつ突き進むと、左記画像Iの通り、落差50m前後と言われている滝を間近で拝むコトができます。さらに、この日は大雨の後であったため…水量も十分だったのですが、こんなときは近付ける滝がとても魅力的ですよね。疲れも癒された…はずでしたが、水飛沫があまりに凄く、7月であるにも関わらず、凍えそうでした…(;^^)。ちなみに、ココ迄来て、渋沢大滝だけに目を奪われてはいけません。大滝を右手に左上を見てみましょう。左記画像Jの通り、滝があるのですよ。「目敏く発見した!」と思ったのですが…どうやら、名前があった様です。チェッ…。

〜宿泊先情報〜(2005/07/16)

 小沢平を10時台に出ると、群馬県側の鳩待峠に着くのは夜…。早朝から移動続きの上、自分達には経験も不足しておりましたから、当然宿泊が大前提であったのですが、このときは3連休という時期であったせいか、空いている山小屋は非常に少なかったです。

 …そんな状況の中、自分達が最終的に宿泊先として選択した所は小沢平から徒歩1時間程度の渋沢温泉小屋。外観は以下の画像の通りで、自家発電小屋。宿泊する1週間前に連絡したのですが、それ以後の連絡は全て丁重に断ったとのコト。特別に御握り弁当を作ってもらったり(←懇願した…)、友達は服を火鉢の近くで乾かしてもらったり…本当に(^人^)感謝×2でした♪



渋沢小屋前にて

 ところで、皆さん…山小屋の様子を御存知ですか? ココ渋沢小屋に関して申し上げますと、1部屋5〜6名の和室詰め込みタイプ。夕食は17時30分から可能で、消灯時間は20時。御風呂は、国立公園内故に石鹸やシャンプーは使用禁止。都会生活に慣れた方にはツライかもしれませんが、たまには野生的に行きましょう!?

 ちなみに、夕食に関しては…右の通り、山菜や川魚を中心とした非常に質素なモノ。朝食もホボ同レベルですので、白米は食べられるだけ食べて、十分な腹ごしらえを!(笑)



夕食です!

K〜M:渋沢温泉小屋→三条の滝→平滑の滝(2005/07/17)

 前日は、小学生以来とも思われる「病気でないにも関わらず、就寝時間が19時台」でした。やりたいコトが全くなくて(笑)、友達と2人…とにかく身体を休めました。そのせいか、自分が起きたのは4時…。友達も5時30分頃には起こし、朝食をとった後、6時30分前には渋沢小屋を出発しました。

 こうなってしまったのも、実は小屋にはTVがなく…自分達が把握している天気予報の情報は前日のモノ。しかも、その情報によると、午後以降の予報は芳しくなく、「天気が崩れない午前中に距離を稼ぐ」という作戦を遂行するにはそうせざるを得なかった…という感じですかね。また、渋沢小屋で聞いた三条の滝へ至る道の情報は結構キツイというモノばかり…。少々、恐れてました。



K三条の滝T@上部



L三条の滝U@下部

 さて、実際の所は…と申しますと、渋沢小屋側は前日同様、道が崩れ、沼の様な状態である箇所も多く、南側から来られる方との対向も困難な程でした。ただ、恐れていた斜度に関しては、予想よりは大したコトなく…むしろ、地図から距離感が掴めないコトが1番キツかったですね。結局、御池方面と三条の滝方面に分かれるT字型分岐点迄の所要時間は1時間20分前後でしたが、自分達的にはもっと歩いた印象が…。

 ちなみに、そのT字路から先は、今度は歩幅があった方が楽だな…という位の急な下り坂を中心とした道。日当たりが悪く、前述した道よりも状態が酷かったため、大変でしたが、ソコをさらに30分程歩くと、左記画像Kの三条の滝の観曝台に到着しました(※残念なコトに、前日に来訪した渋沢大滝の様には近付けません)。

 尾瀬を代表する、この三条の滝は、幅30mで高さは100m。高さが30条であるが故、その名が付いたとのコトですが、個人的には…この尾瀬ヶ原の風景とは異をなす、迫力ある断崖から一気に落水する様や轟く音(※あちこちの滝を来訪しましたが、ココは5本の指に入ります)等から、「もう少し良い命名をして欲しかったなぁ…」と思わずにはいられない程、尾瀬に対する固定概念的なモノを崩された滝でしたね…(;^^)

 …そんな滝の近くで30分程ノンビリした後、先(只見川の上流)を目指しました。次の目標地点は平滑の滝。

 三条の滝からそう離れておらず、精神的にも楽だったせいか…平滑の滝の展望台には約20分程にて到着致しました。

 ただ、展望台と言っても…岩に上って眺める、遠望型。然しながら、見えるモノは右記画像Mの様な姿。"滝"という字、そのものが持つイメージに囚われると、戸惑いを覚えるのかもしれませんが、石庭にて水を表現したかの様な、日本人らしく美を表現された"滝"だなと思いましたね。川からの風も気持ち良い上に、周囲の緑も素晴らしく、個人的には本当に心癒されました。長時間休憩するならば、三条の滝よりもココでしょうね。



M平滑の滝

N〜S:平滑の滝→下田代→龍宮小屋(2005/07/17)

 平滑の滝から20分程、歩くと赤田代の温泉小屋に到着します。ココから先、鳩待峠迄の散策道に関しては、基本的に木道が中心であるため、アドベンチャー要素的なモノ?が抜けたコトには残念な気持ち半分?でしたが、一方で、今迄全く観るコトができなかった湿原風景を愉しめるため、自分達は胸が高鳴りました(※自分自身、湿原風景を観るコト自体、北海道で松山湿原を散策して以来…久々でしたからね)。

N散策道にてT

O散策道にてU

P散策道にてV

Q散策道にてW



R弥四郎小屋

 さて、歩き始めてみると、程なくして…期待通りの景色が待ち受けておりました。各種ガイドブック等で見た写真の景色を目の当たりに出来、本当に感慨深かったですね。

 また、周辺の山々との絡み具合に関しても、素晴らしいモノがありました。植物学には詳しくないので、その方面のコトに関しては多くを語るコトはできません(※コチラの頁は詳しいです)が、上記画像Oの様に遠慮がちに咲いているワタスゲを尻目に、誰の目にも留まる様な黄色い花を咲かせているニッコウキスゲの美しさは突出しておりました。



S燧ヶ岳をバックに…

 そんなニッコウキスゲとノアザミに戯れる蝶を絡めてみた上記画像Q、良いでしょう? こんな尾瀬の夏風景に、心擽られる方は多いかもしれませんね…(;^^)

 ちなみに、このまま道なりに歩くと、下田代の弥四郎小屋(画像R)に到着するのですが…なんと、一緒に散策した友達の高校時代の同級生が「3連休は絶対に忙しいだろうから…」と御手伝いしに来ておりました(※偶然です)。初対面でありながら、ココ迄歩いて来た道程等、そんなコトでも?話が弾みました。

 話しながら思ったのですが、こんな所でバイトするのって最高ですよね…。上記画像Sの通り、小屋の裏には東北最高峰の燧ヶ岳(※この日は、少々翳み気味@2356m)が聳えますし、長期で滞在したからこそ、観るコトが出来る景色というのもあったと思うのですよね。今更ながらではありますが、「貴重な経験を逃したなぁ…」という気になってしまいました。。。

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